みなさん、こんにちは。
東京都江東区で行政書士をしております、白井 豪祐と申します。
相続手続きは、日常生活の合間を縫いながら、法律の定める期間内に対応しなければならず、実際にやってみると結構大変です。
私は、直近1年間で大小問わず相続案件を15件ほど対応させていたきましたが、短い案件で1ヶ月、相続人が多く複雑な案件では、相続手続きが完了しておらず、現在も対応している案件もあります。
相続手続きが完了しないのは、相続人が見つからない、戸籍の収集等に時間を要している、当事者間の話がまとまらない等、本当に様々です。
今回は、相続手続きをしなかった場合のリスクについて、実体験を交えてお伝えできたらと思います。
この記事を執筆した特定行政書士 |
白井 豪祐 |
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事務所名 | 東京深川行政書士事務所 |
資格 | 特定行政書士(登録番号 第22080418号)、申請取次行政書士、個人情報保護士、中学校第一種免許状(社会科)、高等学校教諭一種免許状 (公民)、小型船舶操縦士、ビジネス法務エキスパート、知的財産管理技能士、証券外務員資格、ファイナンシャルプランナー |
所属 | 日本行政書士会連合会 東京都行政書士会 江東支部 |
相続手続きをしないことによる罰則はあるか
相続手続きを行わなかったことにより、現時点で、直ちに罰せられることはありませんが、相続手続きを放置したことによる空き家が、近年社会問題化しており、相続登記手続きが義務化となりました。
正当な理由なく相続登記を怠った場合は10万円以下の過料に処されますので、留意が必要です。
相続手続きをしないことのリスク
「相続手続きを放置する方はいるのだろうか?」と思われるかもしれませんが、私が実務家になってから、相続手続きをしてこられなかった方は意外と多く、直近3ヶ月で4件程、「相続手続きをしばらく放置していたが、今からできるか?」という内容のご相談をいただきました。
相続手続きをしないと、財産が自由に使えないだけかと思われるかもしれませんが、実際に長期間放置すると、様々なリスクが隠れています。
相続手続きをしないことによる不利益は様々ですが、その中でも3つを具体例として挙げさせていただきます。
高額な負債を引き継ぐリスク
相続は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぎます。
そのため、マイナスの財産が多い場合は、相続放棄や限定承認といった手続きをする必要があります。
しかし、期限内に一定の手続きをしなければならないため、期限を過ぎてしまうと認められなくなり、マイナスの財産を引き継ぐことになってしまいます。
預貯金債権消滅のリスク
被相続人の預貯金は、解約等の手続きを行う必要がありますが、一定期間放置し払戻し請求権が消滅してしまうと、預貯金口座から現金を引き出すことができなくなってしまいますので、 特に注意が必要です。銀行の解約等の手続きには、銀行によって若干違いがあるものの、遺言書や遺産分割協議書をはじめとした様々な書類が必要となりますので、 全ての書類を集める期間や親族間の協議の時間も考慮し、余裕を持って手続きを進める必要があります。
権利関係が複雑化リスク
特に大変なのが、ある方の相続が発生し放置している間に、別の親族の相続が発生してしまい、権利関係が複雑になるケースです。 このようなケースの相続案件を担当したことがありますが、関係者が多くなり権利関係が複雑化し、結果として相続手続に時間がかかります。 相続手続きを専門家に依頼する場合は、費用も増大してしまいます。
相続対策は早めにしておくことが望ましい
相続手続きを行わなかったことによるリスクは様々ですが、その中でも代表的なケースを挙げさせていただきました。
相続手続きを行わなかった理由もまた事情によってことなりますが、私の経験上では、「そもそも相続手続きを誰に頼めば良いかわからない」といったケースが多くを占めました。
相続手続きを行う専門家は、弁護士、司法書士、税理士の他に、私のような行政書士を挙げることができます。
法律を扱う専門職も、医療でいう、外科や内科といったように専門分野があり、相続に強い専門家を出会う必要があります。
相続手続きを得意とする専門家と出会うのも、結構大変な作業ですので、相続が発生した後ではなく、相続が見込まれる段階からしておくと良いでしょう。万が一の時のために、家族間で話し合いをすることも大切です。
相続に強い専門家と知り合う方法は様々ですが、まずはお近くの公民館等で開催されているセミナーに参加されるのが手軽ではないかと思います。
また、信頼できる保険会社の担当の方に紹介していただくのも良いでしょう。
法律を専門ととする仕事は、自身が持っている資格とは別の資格の士業(いわゆる他士業といいます。)と共同して仕事を進めることも多いです。相続も、遺産分割協議書の作成は行政書士ですが、登記は司法書士、相続税の申告は税理士等、それぞれの手続きで必要となる知識が異なるため、様々な分野の専門家が各手続きを進めることになります。
専門家も、相性様々あると思いますので、複数名の方々とお会いいただき、ご自身と気の合う専門家を見つけていただけたらと思います。
相続対策はどのようなことをすれば良いかは、様々なポイントがあり、この場で全てをお伝えすることは難しいですが、代表的なものでは遺言や保険を使った相続対策が挙げられます。
特に、公正証書遺言は近年WEBやニュース記事で度々取り上げられていることもあり、電話やメールで作成の相談を受けることも多くなりました。
公正証書遺言は、作成に一定の費用がかかりますが、いざ相続を発生した場合に、現預金の解約する場面等でスムーズに手続きが進みますし、家族間の紛争防止にも役立ちます。
まとめ
今回の記事のポイントは以下の3点です。
- 一定期間相続手続きを行わないと、思わぬマイナスの財産を引き継いでしまったり、現預金が引き出せなくなるといったリスクがある。
- 時間が経過してしまうと、その間に関係者が亡くなる等の理由により、権利関係が複雑となり、結果として手続きの工数や相続手続き費用が上がってしまう。
- 相続手続きを複雑にしないためには、生前から準備をすることが望ましく、相談に乗ってくれる専門家と日頃からコミュニケーションをとっておくと良い。
相続手続きはある日突然やってくることが大半だと思います。
もしものことがあった際にはどうすれば良いかを、家族間で是非話し合ってみてください!
*本記事は、2023年7月1日現在の内容です。
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